接客に携わった方なら誰しも聞いたことがあるだろう。お客様に寄り添い、誠心誠意を尽くしてサービスを提供しろと。どんなお客様でも精一杯尽くせば満足していただけるはずだ、と。そんなわけがない。すでに、お客様は神様ではなくなった。時代がお客様を神の座から引きずり下ろしたのだ。サービスに慣れきったお客様たちは、その一方的な立場を利用して、スタッフであるあなたの安全を脅かそうとしている。あなたが抵抗できないのを知っていて、できる限りの利益を簒奪しようと居丈高になり、無茶な要求を突きつけてくる。ほとんどのお客様は会社にとって福の神だろう。しかし、ごく一部の神は魂をとっくの昔に売り渡し、悪魔に姿を変えてあなたの善意を利用しようとやってくるのだ。「仕方ないよ、だって仕事なんだから」あなたは疲れ切った心と体を自宅へ持ち帰るまで、ひたすら耐えなければならない。勤務時間が終わるまでは、リスクを背負ったまま店頭に立ち続けないといけない。本当に、そうだろうか?絶対に拒否できないのだろうか。だとしたら、あなたは哀れなサービス奴隷だ。「生活がかかっているから」が抵抗できない理由なら、あなたは自身の命を人質に取られているのだ。もうおしまいにしよう。私たちスタッフが犠牲になる社会は。私たちは仕事を口実にして誰かの犠牲になるべきではない。この本は、サービス業に携わるすべての人たちに向けた『奴隷解放宣言』だ。接客業のスタッフへのエールを送るとともに、横暴なお客様のうっぷんのはけ口にならないための指南書でもある。僕らは誇りを持って接客の業務に勤しもう。サービスを与える側と受ける側は、常に対等でなければならないのだ。★みなさんこんにちは!あっくんさんと申します。この本は、接客を仕事にしている方へ向けて書きました。接客業で働く人々は、常にリスクを抱えています。過剰なクレーマーによる暴力が跡を絶ちません。現代は就労人口の約7割がサービスに関わる仕事をしている時代と言われています。それなのに、世の中のコンビニ店員や接客スタッフは、抵抗することもできずにただリスクにさらされ続けているのです。強い人は気にしないかもしれません。しかし、中には横暴なお客様に疲弊して、苦しめられている人も少なくないのでは?僕自身、東京ディズニーランドで働いていた期間に、お客様からのクレームを受けたこともありました。その際感じたのは、僕らは抵抗することを許されていない立場だということです。でも、お客様の暴力にただ耐え続けるだけでは、従業員の心身はすり減る一方です。そこで、少なくともクレームに備えることはできるのではないか?気持ちの上で備えておけば、少なくとも最悪の事態は避けられるのではないか。そう、それが【接客の心がまえ】なのです。